群馬の端っこに住んでいた私は、小学校や地域の運動会で焼まんじゅうを売る屋台が来ていて、それを買って食べたということが何度かあった。焼まんじゅうという食べ物は日常的ではないにせよ、そこそこなじみがある食べ物ではあった。ところが、焼まんじゅうは群馬県以外の場所ではなじみがないどころか、知られてもいない食べ物であるとのこと。そこで、今回は群馬アイデンティティを発揮して、群馬の焼まんじゅうの店を食べ歩いてみようと思い立った。前橋、伊勢崎、高崎。まさに焼まんじゅう三都物語である。
県立図書館で別の調べ物を済ませ、歩いて原嶋屋総本家へと向かう。事前に調べておいた住所の場所に、その店はあった。焼まんじゅうを一つ、ここで食べると告げ、お茶を飲んで焼き上がるのを待つ。1本150円。店内は落ち着ける雰囲気で、この店が昔からあったことを示す証をいくつか見ることができる。客はいたが、この場で食べる人はいなくて、持ち帰りを求める客ばかりだった。焼き上がった焼まんじゅうが運ばれてきた。串に刺さった4つの焼まんじゅうと木でできたフォークのようなものがある。この木でできたフォークのようなもので焼まんじゅうを串から抜いて食べるとかなり食べやすい。串に刺さったものを丸かじりで食べていたり、ケーキなどを食べるようなフォークで食べていた私としては、この食べやすさは驚きだ。さすが専門店だ。肝心の焼まんじゅうは、ふわふわした感じでやさしい味だ。これは100人中99人がおいしいと言うと思う。
帰りは前橋駅まで歩いて帰った。通りがかった園前橋るなぱあくは家族連れなどで賑わいがあった。
原嶋屋総本家の焼きまんじゅう | 原嶋屋総本家 |
JR両毛線に乗って伊勢崎へと向かう。伊勢崎止まりの列車で、前橋でどっと人が降りて、前橋からは空いた。前橋大島、駒形では、車内の暖気を逃がさないためにドアは全開にならず少しだけ開いて、客が手でこじ開ける。「ドア半自動」は冬の季語と言えるだろう。
伊勢崎駅から歩いて約十分、大甘堂という焼まんじゅうの店で食べる。ここにはあん入りの焼まんじゅうも売っている。あん入りは食べたことがないので、普通の焼まんじゅうとあん入りを焼まんじゅうを一つづつ食べることにする。あんなしが130円、あん入りが230円。それにしても、この店の客が途切れることがない。私の前にも先客はいて、後にも次から次へと客がくる。やはり店で食べる人はいなくてお持ち帰りの客ばかりなのだが、一人で大量に買っていく。焼き上がった焼きまんじゅうを串から抜いて紙に包んでおり、二十個くらいの焼まんじゅうが紙に包まれている様はけっこうおもしろいものがある。しばし待って私の焼まんじゅうが焼き上がった。やはり木でできたフォークのようなもので食べる。こちらはわりとパリッと焼いている感じがする。あん入りのほうがよりおやつらしさがある。写真だと手前の、あん入りのほうが見た目が大きい。一つの串に4つのまんじゅうが刺さっているわけだが、よく考えれば普通のまんじゅうを一度に4つ食べるということは、まずしない。それをしてしまうのが焼まんじゅうのおそろしさか。
大甘堂の焼きまんじゅう |
JR両毛線に乗って高崎に戻る。伊勢崎始発なので余裕で座れたが、やはり前橋から多くの人が乗ってきた。土曜日の13時台ということで高校生が多い。
高崎駅から歩いてオリタまんじゅう店へと向かう。ここも先客がいてしばし焼き上がりを待つ。店は焼まんじゅうのにおいよりは白菜のにおいが強かった。白菜を漬けていたのだ。店の中は狭く外で待っていたのだが、店の中で食べていくと言ってしまったので、持ち帰りの焼まんじゅうを座って待っていたおばさんが立ってくれて、その椅子に座らせてもらう。もう一人おばあさんがいて、この人は店側の人かと思う。そういうわけで、焼まんじゅうの写真を撮れるような雰囲気ではなかった。もっとも、焼まんじゅうを食べにきたわけであって、焼まんじゅうの写真を撮りに来たのでではないので、それはそれでいい。焼き上がったあとにたれを塗っており、たれの味がけっこう強い。表面はかりっと焼き上がっていた。私の後は客がいなかったので、店の人にどこから来たかと聞かれた。この季節は旅行の人も多いとのこと。群馬の交通の要衝である高崎駅から近く、「焼まんじゅう」で検索すると上位でヒットする店なので、旅行の人も多く来るのだろう。
オリタまんじゅう店 |
今回三つの店で焼まんじゅうを食べた。確かに店によって味や食感は異なるが、どの店がいちばんだったかという優劣はつけられない。ただ、どの店も人の手で一つ一つ焼いており、そしてその味を求めて地元の人が訪れていた。そういう店の焼まんじゅうはおいしいということが言えると思う。