小千谷の街中からバスで駅まで出る。
長岡から来た十日町行きの列車は1両編成のディーゼルカーで、小千谷で降りる人が多かったが、それでもまだ混み合っている。越後川口から信越本線を離れ飯山線に入っていく。越後川口の時点で、「この列車は戸狩野沢温泉行きのワンマンカーです。」という自動放送が聞こえてきた。どうやらこの列車がそのまま戸狩野沢温泉まで行くようだ。越後平野から山の中に入っていく。飯山線に入ると十日町に向かう学生やらが多く乗ってくる。高架のほくほく線が見えてくると十日町に到着。ほとんどの人が降りていく。終点だから当然だが、私はそのままこの列車に留まった。
時刻表では別の列車となっているのだが、先ほど乗った列車がそのまま戸狩野沢温泉行きとなった。そのまま乗っている人、十日町から乗った人など、乗客は十人強。これならば単行で問題ないだろう。
越後田沢で数人が降りていった。中里村の中心駅だ。「雪国はつらつ条例」という条例を作ったが、「雪国はつらいよ条例」と間違えて教科書に載ったことで少し話題になったことがある。今は夏だから雪はない。駅前の印象だけで判断するとはつらつとしているとは言い難かった。
信濃川を渡り、川が線路の左側に移る。車内から信濃川を見下ろす。津南は町の中心部から川を隔てて離れたところに駅がある。架かっている橋の向こうに中心部があるのだが、ぱっと見でそれをうかがい知るのは難しい。駅前はそれほど賑わいがあるわけではなく、乗り降りする人も少なかった。
新潟県から長野県に入って森宮野原に到着。森宮野原は長野県の森と新潟県の宮野原の二つの地名が合わさった合成駅名である。地元の爺さんが一人乗ってきた。長野県側に入ると、少しづつ人が乗ってくる。ずっと信濃川に沿って走るが、先日に降った雨が影響しているのか、いつもこんななのかは分からないが、川の水はだいぶ濁っていた。
戸狩野沢温泉に着いて、向かい側のホームに2両編成の長野行きの列車が停まっていた。それにしてもかなり混んでいる。客層を見た感じだと、地元の人も多いが、地元以外から来た人も多そうだった。なんとか席が空いていたので、そこに座る。
北飯山からも若者がたくさん乗ってきて、次の飯山でも降りる人はいたが、やはり乗る人が多い。ロングシートで立つ人が多いので、もう景色も見えないような状態で、早く着いてほしいと思いながら乗っていた。途中の小駅でも少ないながらも人は乗ってきた。やっと、私が降りる豊野に到着。ここで確認すると、私は一両目に乗っていたのだが、二両目のほうが空いていたようだ。
途中、雨が降っていたところもあったのだが、豊野では雨が降っていなかった。駅前の食堂で昼食を食べて、出ようと思ったら夕立のような激しい雨が降ってきた。駅から近いのが幸い、傘をさして駅舎に駆け込む。
直江津行きの普通列車は3両編成で、混んでいた。
豊野を出ると山の中に入っていく。長野県最後の駅、黒姫で降りる人が多かった。次の妙高高原から新潟県に入る。今まで上り勾配だったのが、下り勾配になる。妙高高原では降りる人もいるが、乗る人もいて、乗客は減らない。
関山はかつてスイッチバックをしていた駅で、その跡があった。二本木は今でもスイッチバックで、出発すると来た道を少し後進し、また前進する。その分だけ時間がかかっているわけだが、長い旅の中でたまにこんなイレギュラーなことがあると、楽しいものである。
新井で降りる人もいたが、やはりここまで来ると乗る人が多い。高田では降りる人が多かった。
直江津からは富山行きの列車に乗る。3両編成。異様な広々さを感じる車両だ。
谷浜には私が小学生の頃に海水浴で来たことがある。群馬の山の中から数時間かけて行っただけに、覚えていないはずがない。私にとっては海水浴場の代名詞のようなところではあるが、車窓から少し見た感じでは、それほど賑わっているようには見えなかった。
それにしてもトンネルが多い。鉄砲水や土砂崩れで不通になっては困るが、味気なさも感じる。名立はトンネルに挟まれたわずかな明かり区間にある駅だし、筒石は駅のホーム自体がトンネルの中にある。かなり暗い駅だ。浦本までそれが続く。
14時25分頃、糸魚川に南小谷方面から来た列車が到着した。この折り返しが南小谷行きの列車ということになる。1両編成である。たまたまこのタイミングでホームに行ったので、私が一番乗りだった。ところがこれは嵐の前の静けさだった。まず、36分に富山から来た普通列車からたくさんの人が乗り換えてくる。次に40分着の金沢発の特急列車からまた乗り換えてくる。このとき座席は埋まり、立つ人も出てくるようになった。15時9分発の金沢行き特急列車からの乗り換え客はそれほどいなかったが、既に満員列車と言ってもいい状態になっている。向かい側に座った人は、金沢から松本まで行くようだった。そういう需要もあるわりには、列車の本数も多くはないし、1両編成という心許なさである。
最初の停車駅である姫川では、近くに温泉施設があるからか数人が乗ってきた。降りる人はいなかったので乗客数は純増である。根知の手前のあたりから山深くなってくる。まわりに旅館くらいしか目立たない根知や、まわりに発電所くらいしか目立たない小滝に停まっていくが、ここでの乗客はいなかったようだ。ダムの下流は姫川の水量も少なかったが、上流に移って水量も増してくる。列車はそれほど速度が上がらずに進む。川の向こうの道を走っているトラックに簡単に抜かされる。新潟県最後の駅である平岩では登山客が十人ほど乗ってくる。彼らは荷物も大きいので果たして乗れるのかと思ったが、どうやら乗れたようだ。
長いトンネルを抜けると長野県に入る。これで、この旅四度目の長野県入りだ。長野県最初の駅、北小谷では降りる人もいた。次の中土でも登山客が乗ってきた。中土を過ぎると次は終点の南小谷で、既に「臨戦態勢」に入る人もいる。田んぼも見えてきて、いくらか里に降りてきたことを実感する。ここで現在時刻を確認すると、既に南小谷に到着すべき時間を過ぎている。やはり、遅れが生じているようだ。ようやく終点の南小谷に到着。この列車が折り返しの糸魚川行きになるようで、ホームには列車の到着を待つ人が列を作っていた。
南小谷に着いた列車から信濃大町行きの列車にどっと乗り換えてる。1両編成から2両編成の乗り換え。なんとか座席を確保したが、中には座れない人もいた。自分が無理に座ることもなかったかとも思うが、立っている人もお年寄りというわけではないので、そのまま座っていることにする。定刻より5分ほど遅れて発車した。
白馬で降りていく人がいた。ただ、乗ってくる人もいて乗客数は減らない。西側の山なみははっきりは見えなかった。やがて仁科三湖が見えてくる。三湖のうちの何湖かはよくわからないが、とにかく湖を見る。青木湖、中綱湖、木崎湖の順ではあるが、この湖が何番目かがよくわからない。ヤナバスキー場前はスキーシーズンではない今は通過する。湖を見るにはよさげな駅だ。後で調べるとこれが青木湖だった。
信濃大町に到着する頃には遅れを取り戻していた。
信濃大町から富士見行きの列車に乗る。この列車も混んでいるのかと思ったが、3両編成で、かつ信濃大町で降りた人もいたようで、悠々座ることはできた。ほっとする。
この時間に松本に向かう列車なので、もうそれほど乗ってこないとは思っていたが、その予想は外れた。松本に近づくにつれ混んでくる。特に穂高、柏矢町、豊科から乗ってくる人が多かった。豊科から乗ってきた、罰ゲームのような化粧をしている女の子など床に座って携帯電話をいじっくている。着信音を鳴らして遊んでいる。やがて松本に到着。降りる人がほとんどだが、この列車は富士見行きで、松本から帰路につくためにこの列車に乗ってくる人が多い。降りる人がいるのに我先にと車内に向かってくる。そんな中で例の女の子が「降りる人が先だよね」と一般常識を言っているのが可笑しかった。
松本駅前のホテルに泊まる。一昨々日、一昨日、昨日と日没後の宿入りだったが、今日は日没前に宿に入ることができた。今日は人にあふれている光景を何度も見た。盆休みだから仕方がないのか。